色黒きは地獄?
大論に云く「臨終の時色黒き者は地獄に堕つ」等云云、
これは安国論2 「未顕真実」の撤回 で紹介した「妙法尼御前」への返書中の一文です。
ちなみに「未顕真実」の撤回とは次の文です
「一代の聖教いづれもいづれもをろかなる事は候はず、皆我等が親父大聖教主釈尊の金言なり皆真実なり皆実語なり」
詳しくは平成檀林1の立正安国論シリーズをお読みください。
さて 大論に云く「臨終の時色黒き者は地獄に堕つ」ですが 「大論」とは大智度論 の事です。 大正蔵経では第25巻に(No. 1509 龍樹造 鳩摩羅什譯 ) として載っています。
元の100巻を大正蔵は89巻に纏めています。
加えて 天台大師の摩訶止観に云く「身の黒色は地獄の陰に譬う」等云云 と、死相が色黒の者は地獄に落ちているかの如くいっています。
反対に 大論に云く「赤白端正なる者は天上を得る」云云、天台大師御臨終の記に云く色白し、玄奘三蔵御臨終を記して云く色白し、
一代聖教を定むる名目に云く「黒業は六道にとどまり白業は四聖となる」此等の文証と現証をもんてかんがへて候に、此の人は天に生ぜるか」と 死相が白いと天上に行くとしています。
自分は大学時代、黒人を含む米兵に英会話を教わったことがあり、何度か彼らの家庭にも招待された事もあります。
安国論シリーズを書いていて、この「色黒き者は地獄の相」で地獄に堕ちるなんて絶対に黒人には言えないよなと、笑えない話を仲間達としたことを思い出したので番外編を書きました。
またこのブログでは経文ではない論書の誤りは当然のことと無視していましたが、釈迦はインド人でどちらかと言えば色が黒い筈だし、同じくインド人の龍樹が、「色黒は地獄の相」だなんてホントに書いたんかいと思い、今回大論全巻をチェックしました。
結論はやっぱり大論にはそんな事は書いていません。
大論には黒という文字は88回しかありません。
大論には墮地獄という言葉が全般的に61回出現しますが、その前後の文章中に黒と絡む文章は有りません。
大智度論釋初品中毘梨耶波羅蜜義第二十七卷 第十六 に誤解を生みそうな文章があります。
地獄とからむ文章に「色界無色界」の事として「黒縄地獄」または「黒繩大地獄」という地獄の名前が出てきます。
「色界無色界亦如是。活地獄中死黒繩地獄中生。黒繩地獄中死 活獄中生。活地獄中死 還生活地獄中。」の文章ですが、
「活地獄」の中で死に、「黒縄地獄」生まれたり、そこで死んでまた「活地獄」に還生する、という話で、色黒だからどうのこうのではありません。
日蓮聖人は同じ色黒きは地獄を千日尼御前返事にも書いています。
「法雲自在王如来迹に竜猛菩薩初地の大聖の大智度論千巻の肝心に云く」云云と開目抄に書いていますが、大智度論は百巻ですから大論そのものは読んでいないのです。
「色黒き者は地獄」「色白は天上」は、大智度論を読んだことのない人、どうせ読めない人への、悪辣なデマに過ぎないようです。
これも支那汚染仏教の実態なのだと理解してください。