26 涅槃経 1
さてここからは多くの書簡に、「涅槃経に云く」 と引用された最後の経文群からの誤りを指摘する。
涅槃経にはいくつものバージョンがあるが、日蓮聖人が涅槃経に云くとして使用している涅槃経は
「大般涅槃經」だが 大正蔵経には 番号374と375の2経がある。
日蓮聖人は天台がそうだからか、374の(曇無讖譯) を使っている。
経番断定の根拠は、守護国家論 に引用された「涅槃経に云く「若し衆生有つて熈連河沙等の諸仏に於て菩提」云々である。
熈連河沙は恒河沙の事で、374には活字が無いものが多く、画像で代用しているので、検索にはかかり難いので、375も同時にチェックすると良い。
大般涅槃經
(0374) はT0374_.12.0398c07: 於熈連河沙等諸佛所 發菩提心
(0375) はT0375_.12.0639a21: 於一恒河沙諸如來所 發菩提心
「熈連河沙等の諸仏」 は 374 (曇無讖譯) の表現で、 375の(慧嚴譯)では 「仏」を「如来」と表現している。
日蓮聖人の引用は「熈連河沙等の諸仏」だから 曇無讖譯を使用していた事が判る。
さて 引用の誤り例だが、
引用 涅槃経に云く「一切衆生大乗を信ずる故に大乗の衆生と名く
書簡 当体義抄 123
引用の文は経には無い
涅槃経内で「大乗と名付」けられたのは次の2つのみ、
大般涅槃經 (0374) 384a25:ページの 「爲護正法 乃名大乘」 と
0387b05ページの: 「是名大乘 大涅槃中因縁義也」 だけだであって、 「大乗の衆生」は無い。
引用 涅槃経に云く「聖人に難を致せば他国より其の国を襲う」と
書簡 呵責謗法滅罪抄 124
涅槃経には 「襲」うという文字が使われていないし、他国に就いて語られたのは 農作が好調、とか 遇惡風雨寒苦、若しくは他国から逃亡する事がある、という例だけだ。
攻めたり襲われる等は書かれていない。
引用の元は、捏造の類である。
引用 涅槃経に云く「大地の上に針を立てて大風の吹かん時大梵天より糸を下さんに糸のはしすぐに下りて針の穴に入る事はありとも、末代に法華経の行者にはあひがたし」
書簡 妙法比丘尼御返事[亡夫追悼御書] 125
引用文の話は全く涅槃経には出てこない。 これも引用元は捏造経疏の類であろう。
涅槃経に大梵天王は何度か出て來るが、糸を下すの例えは全く無い。
涅槃経に出て來る糸に関する話は 藕根絲懸須彌山 と、「須弥山に百合の根の糸を懸ける」事は考えられようか?という言葉に一度でて來るだけだ
日蓮聖人は 何を根拠にここに挙げた3例を 涅槃経に云と書かれたのか,まったく不明である。
次回も理解に苦しむ 超々省略再構成経文 = 捏造? の例が続きます。
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